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*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。

「日米経済統合」

ジェームス・P・ズムワルト
在日米国大使館経済担当公使

日本経団連アメリカ委員会における講演

2006年6月23日

 本日は、日本経団連アメリカ委員会企画部会にお招きいただき、ありがとうございます。また私の良き友人である、在日米国商工会議所(ACCJ)のチャールズ・レイク会頭と、こうして席を並べることができ大変うれしく思います。

 4年間の日本勤務を終え帰国するにあたり、友人の多くが、今日の日米経済には1980年代、90年代とは違い、大きな問題がないと私に言います。実際には非常に重要な経済問題があるのですが...それは牛肉です。牛肉については、また後ほど触れることにしますが、しかしわれわれは「大きな問題がない」ということで特徴付けられるような経済関係に満足すべきではありません。

 アメリカと日本は強固な経済関係を享受していますが、しかし2005年のアメリカの日本への輸出は、2000年の数字を下回っています。日本は依然としてアメリカの農産物輸出の重要な市場ですが、その農産物輸出も過去5年間で93億ドルから79億ドルに減少しています。また、アメリカから日本への直接投資は1995年から2005年の間に倍増しましたが、アメリカの対外直接投資全体のうち対日投資はわずか4%に過ぎず、これは日本が世界のGDPに占める割合、11%の半分未満です。2国間経済関係は良好ではありますが、さらに努力しなければなりません。本日は、両国経済の相互利益を進展させるために、さらに何ができるか、ということを問いたいと思います。

 検討すべき選択肢のひとつは経済統合をさらに進めるということです。私は日本経団連会員企業の皆さんを称賛いたします。というのも、ビジネス界こそが貿易・投資を通じて両国経済の統合を率先しているからです。しかし両国政府はこのプロセスを加速することができます。

牛肉貿易の再開

 もちろん、両国は多くの課題に直面しています。牛肉のような貿易問題を早急に解決する必要があります。牛肉貿易問題が長引けば、それだけ経済関係全体への悪影響が大きくなります。

 アメリカは、日本が日本産牛肉の安全性確保のために取った措置を信頼し、昨年日本産牛肉に対して自国市場を再開放しました。今度は日本の番です。牛肉貿易を再開すれば、両国経済のさらなる連携に取り組むことができます。

FTAの 「F」を再確認

 2つ目の課題は、「自由貿易協定(FTA)」について、異なるビジョンを持っているということです。

 アメリカは、FTAの「F」を忘れてはならないと強く考えています。皆さんご存知のように、「F」は「自由」、そして「自由貿易」とはFTAを締結する2国が、一定の期間内に、(関税、非関税措置、そしてサービスを含む)実質的にすべての貿易を対象とすることに合意する、ということです。

 もちろん、いくつかのセンシティブな分野があることは理解しています。このような政治的課題の対応には、貿易の完全自由化までに長い段階的導入期間を設けることです。アメリカのFTAでも、センシティブな品目には通常より長い実施期間を設けています。北米自由貿易協定(NAFTA)では、いくつかの品目においては、ゼロ関税を達成するまでに10年以上かかりました。にもかかわらず、ごく少数を除いたすべての品目において、協定加盟国は自由貿易に向けた期限付きのロードマップを策定しました。

 私は、「自由」に重点が置かれていない、あるいは「自由」という言葉が入っていない2国間貿易協定が、まん延することに懸念を抱いています。そうした協定では、多くの品目について、あるいは分野全体についてすら、関税撤廃の期日を設定できていません。また、そうした協定は非関税措置やサービスについても十分に対応していません。アメリカは包括的でないFTAを求めていませんし、今後も求めません。アメリカや日本のような貿易大国には、他国の模範となるような高水準のFTAを締結する、特別な責任があります。

解決すべき課題

 もし日本が、農業従事者が保護のない環境で競争することを促すような農業改革政策を導入するとすれば、包括的FTAについての交渉を始める用意ができるようになるでしょう。私は、国内価格をつり上げる貿易障壁の保護ではなく、直接補助金による農業従事者支援へと重点を移行する政策議論が日本で行われていることに勇気づけられています。そのような政策を実施すれば、日本はより高い水準のFTAを求めることができるようになるでしょう。

 もし日米FTA交渉を始めるとしたら、また別の課題にも直面することになるでしょう。協定を結ぶとすれば、それは確実に他国のモデルとなるでしょうから、非常に高水準の経済統合についての協定を目指すことになると思います。まだ通商ルールが定まっていない、いくつかの分野を含め、水際措置にとどまらない事項について議論することを望むでしょう。そうした分野すべてに関して、日米両国のビジネス界からご意見、ご提案を聞かせいただきたいと思います。

より密接な経済統合

 両国の強固な政治的関係にもかかわらず、農業に関する日本の課題は、アメリカと日本がFTAを直ちに求めていくことの妨げとなるかもしれません。しかし、それはより密接な経済統合を目指した取り組みを始めることができないということではありません。

 両国経済のさらなる結合を促進するための構想はたくさんあります。ある分野では2国間経済協定を求め、他の分野では地域間または多国間フォーラムでの進展を求めるかもしれません。そのような行動が、これまでの協議を最終的にはFTAにつながるであろう経済統合に向けた具体的かつ積極的な取り組みへと前進させるでしょう。私は、次の基準を用いて、アメリカと日本が経済統合を強化できる分野を選択すべきだと思います。

1)他国のモデルとなり得る高水準の協定を交渉できるか。

2)ビジネス界に具体的な利益を提供できるか。

3)達成可能なものであるか。

 日米関係は非常に広範にわたっているので、多くの分野で発展の可能性があります。迅速な合意が可能な場合もあるかもしれませんし、あるいは取り組みに時間がかかることもあるでしょう。しかし、経済統合の推進に向け、前進できるところでは前進することを検討すべきです。すぐにでも前進できそうな分野について、是非皆さんのお考えを教えていただきたいと思います。日米両国が経済統合の推進に成功するには、太平洋両岸のビジネス界の強力な支援が必要です。私見ではありますが、経済統合強化に向けて一層の取り組みを要する候補として、次のような分野があると思います。

知的財産

 日本とアメリカは世界の知的財産大国であり、世界標準を定めるため協力する必要がありますし、一部の分野ではすでに協力をしています。

 他のFTAに見られる文言よりも踏み込んだ、2国間知的財産権協定の可能性を真剣に検討する時期が来たと信じています。地域のモデルとなり得るような日米知的財産権協定を目標に努力すべきです。われわれは、グローバリゼーションと新たなテクノロジーの出現がもたらすダイナミックで困難な課題にも取り組んでいける、包括的かつ最先端をいく協定を想定しています。

 われわれは、中国およびその他の国による模造品から知的財産権を保護するための取り組みをさらに強化しなければなりません。アメリカと日本は、模造品・海賊版の貿易撲滅のための国際的な法的枠組みの改善に向けた協力を通じ、知的財産権侵害の取り締まりを強化できます。

安全な貿易

 経済統合を推進できる分野のひとつは、私が 「安全な貿易」(secure trade)と呼ぶ分野です。2001年9月11日の恐ろしい出来事の後、アメリカと日本は国際テロリズムに対して脆弱(ぜいじゃく)であるということを認識し、そうした脆弱性を減少させるための措置をそれぞれが講じてきました。

 しかし、私は、今こそ国境警備を強化しながらでも貿易コストを削減できるような方法を検討する時が来たと確信しています。ひとつの例としては、コンテナを追跡し、その中身をモニターするために、ICタグを利用することです。このようなシステムがあれば、両国の取り締まり当局はリスク評価に必要な情報を入手することができるでしょうし、国境での検査の必要性を軽減できます。

 日米は大いなる友人であり同盟国です。非常に機密度の高い軍事技術や情報を共有しています。両国が協力すれば、セキュリティーを強化しつつもコストを削減する、さらに安全かつ効率的な貿易システムを作り出すことができると私は確信しています。ビジネス界の皆さんからも、安全な貿易と低コストという2つの目標を達成するために必要なアイデアの提供や取り組み方に関する提言、技術開発を通じて支援していただきたいと思います。

金融サービス

 日本が世界の金融ハブになるという目標の達成を支援するため、金融サービス分野を統合する方策を探る必要があります。規制の透明性と公正性に関する最高の世界基準を定めることで、日本は多国籍金融会社を東京に地域拠点として誘致することができます。日本には、金融ハブとして東京をニューヨーク、ロンドンと統合するための十分な市場規模とノウハウがあります。日米の規制当局は現在、金融の世界基準を定めるべく協力しています。そうした共同の取り組みを足がかりに、それぞれの金融システムを強化し、統合を推進することができます。

外国直接投資

 われわれは、小泉首相が、対日直接投資を日本のGDP比5%にまで倍増させるという目標を設定したことをうれしく思います。日本がこの目標を達成できるように、アメリカと日本が政策論議を加速させる機が熟したと私は思います。ひとつの簡単な取り組みとしては、国境を越えたM&Aについて国内の合併と同様の取り扱いをする、というものがあります。現状では、日本の買い主が日本の売り主から現金の代わりに株式を受け取った場合、その株式を売却するまで課税繰り延べを受けることができます。しかし日本の買い主が外国の売り主から株式を受け取った場合には、これと同様のルールは適用されません。われわれは、国境を越えた合併についても、国内合併にすでに与えられているものと同様の扱いがされるよう求めています。

民間航空

 両国の民間航空関係は、日米関係を大幅に拡大させた1998年の日米覚え書きによって規制されています。それによれば、2年以内に両国の民間航空関係を「完全に自由化」することが約束されています。しかしながら、ここ8年間、この約束の達成に何の進展もありません。たとえわずかな自由化でも、アメリカおよび日本の航空会社に貿易に関する政府の規制を受けずにもっと自由に運行させることで、2国間の観光および貿易はさらに促進されるでしょう。われわれは、日米間のビジネス関係者および観光客の旅行を促進するために、交渉により両国が自由化に近づくことができるよう期待しています。

食品安全性/食糧安全保障

 食品の安全性と食糧安全保障の分野においても、経済統合を進めることができます。世界最大の農産物純輸入国である日本は世界の食糧を入手する必要があります。しかし、輸入依存度の高さにもかかわらず、日本は意外にも国際食糧貿易システムの強化には関心を示していません。私は、この関心の欠如は、多くの日本人が、食糧安全保障、すなわち安全で信頼できる食糧供給の必要性を、国内での食糧生産と同一視しているからだと思います。しかし、日本が国内需要を満たすだけの十分な食糧を生産できないことは、われわれ全員が理解していると思います。

 日本は、食糧安全保障問題に単独で取り組む必要はありません。アメリカの農業従事者が、日本の消費者に信頼でき安全な食糧を提供したいと思っているからです。われわれは、日米の農産物貿易関係を強化するための道を探らなければなりません。そのためには、基準の違いにより貿易が阻害されることのないように、食品安全性基準の調和を通じ、両国が食品安全性問題に取り組むことが必要です。

さらなる関係強化に向けて

 本日は、日米両国の経済関係強化をどのように進めていけるかについて、私の考えをお話しさせていただきました。何もしないか、それともFTA協議を始めるか、という2つの選択肢だけしかないと考えるのは、不必要に選択の幅を狭めることだと私は思います。日米関係は非常に重要であり、前進が可能な分野で前進を遅らせることはできません。

 したがって、さらなる経済統合に向けた前進が可能なだけではなく、望ましい、具体的かつ達成可能な分野について、経済統合の検討課題を特定すべきだと確信しています。

 知的財産権、安全な貿易、金融サービス、投資、民間航空や食糧安全保障といった私の提案は、決してすべてを網羅するものではありません。実際にアメリカ政府内では、今後の日米2国間経済に関する協議事項を明確化するうえで、日本経団連のような日本の経済団体からの支援に期待しています。経済関係強化のためにアメリカ政府は、どの分野に焦点を当て努力すべきか、皆さんからご意見を伺えることを期待しています。

 ご清聴いただきありがとうございました。皆さんからのコメントやご質問を楽しみにしています。